食べ日記 13
ここでは私が、あちこちうろついて食べ歩いたお店を紹介します。 by いずみ


ペレステモン八八Infinity Cafe
(2004/6掲載)

ペレステモン

京都の清明神社の隣のビル1F
075-417-3380

http://www9.plala.or.jp/penstmon/index.htm



京都の清明神社の隣のビル1Fに、「ペレステモン」というとてもステキな店がある。
店の真ん中に機織り機が置いてあり、お客さんのいない時にはご主人が織物をしている。
聞くともともとネクタイ屋さんだったそうで、糸や布の端切れが残るのをなんとか使いたい、という発想から様々な作品を作ってきたそうだ。だから店内にある作品のほとんどは、布の端などを再利用したものらしい。

たしか以前に来た時には、バーバリーの布の端っこばかりがたくさんあった。それを使って作った小物入れか何かがあったような気がする。
店内には額に入った絵のようにものもあるし、コースターのようなものもある。
そしてたくさんの美しいとしか言い様のないかばんや小物入れ、ショールやストール。絹の持つ上品な光沢と、草木染めなのだろうか、微妙な色合いが絶妙だ。
小さい袋物や、コースター、ランチョンマット、単なる糸、端切れ、巾着、ベスト…一つ一つ見ていて飽きない。
本当にいい物を丁寧に作品にしたものには、何か淡い輝きのようなものがある。

以前初めて来た時にとても気にいって、おじさんを捕まえて質問攻めにしたのだが、またまたあれこれ聞いていると
「もし時間があるのなら、とてもおいしい不思議なパン屋さんがあるけど。」と言う。 その道のプロの言うことは聞いて間違いがない。それにそこはどうも、かなり変わった店らしい。

おじさんがサラサラと地図を書いてくれたが、行き方よりもまずその紙に目を奪われた。生成りの紙の裏側に地図を書いてくれたのだが、表側になにやらしゃれた模様が入っている。
「この紙は?」と尋ねると、「和紙です。」と言う。
紙の表側にはお店のマークとロゴが入っているから、たぶん包装紙の端切れなのだろう。この人は本当に自分の仕事や自分の店を愛しているのだろう。





(2004/6掲載)

八八Infinity Cafe

天然酵母パンとライ麦パン
京都市左京区千本上長者町東入る一筋目下がる
TEL 075-451-8792
営業時間AM10:00〜PM10:00 14:00〜18:00の間は
配達などで不在のことあり。定休日は木曜日



入っていいの?突き当たりまで行くとまた看板がその日は娘とデートをしていて歩き疲れていたので、タクシーで行った。住宅地の中の小道に小さな看板が出ている。この看板を見落としたらたどり着けない。
看板の所を曲がると、一歩ごとに田舎の雰囲気になる。一歩ごとにこの道でいいのか不安になる。曲がった道を突き当たりまで行くとまた看板があり、右手に古い古い民家があった。

ちいさい玄関は開いていて、その奥の戸に網戸が貼り付けてあり、そこに「どうぞおあがりください」みたいな張り紙があった。ということはやはりここが店らしい。
ちょっと勇気を出して、ガタガタと戸を開けて「こんにちはー」と声をかけてみる。 「はい、どうぞ」と声が帰ってきてほっとした。あがってもいいらしい。


もののみごとに古い家全く実に、もののみごとに古い家だ。
そしてなんとも言えない、いい匂いがする。パンの匂いだ。
奥に入ると、小さな棚の上にパンが並んでいる。ドイツパンの店なのだそうで、天然酵母と全粒粉を使った重いパンが主流だ。
出てきたおじさんの顔を見ると、ペレステモンのおじさんの雰囲気とどことなく似ている。

私はチャイを、娘はジュースを注文して、それからもちろんパンも食べたい。私たちはチーズが大好きなので、適当に作ってもらうことにした。

テーブルは高さがあきらかに高すぎる。作りも妙だ。でもなんだか居心地がいい。私はすっかりくつろいで横にゴロンと転がって娘とおしゃべりすることにした。

パンのセットに感激!!!出てきたパンのセットに感激!!! 

もちろんすべてのパンをナイフで半分に切った。チーズも上質のものばかりで、濃厚なパンと濃厚なチーズがなんともセクシーな味がする。
とにかく、いつまでも口の中にあってほしいと思う。
かむ程に危険な深みにはまっていくようなうまさだ。ワインの飲める人はきっと中毒になるだろう。

今回は幸運にもデジカメを持参していたので、あちこちの写真を撮ったのだが、家に帰って見てみると、カフェの中は1ヶ所1枚づつしか写真を撮っていないのに、チーズの乗ったパンの写真が4枚もあった。
うん。このチーズとパンなら4皿食べたいね。

娘と夢中で話しているうちに、もう一組のお客さんが来た。が、ふっと見えなくなった。後から分かったのだが、調理場の横にテラスがあり、そちらに座ったらしい。
そこはもともと部屋があったのだが、木が部屋の中にはえていて、屋根も突き抜けていたためにそこから雨漏りしていたそうだ。それで廃屋になっていて、大家さんが好きに改造していいと言ってくれたのだそうだ。


その部屋を解体してテラスにした時に出た廃材で、私たちの座ったテーブルなどを手作りで作ったのだそうだ。 どうりで不思議なテーブルだと思った。
よく見ると、チラシを並べてある棚の裏側にはたたみが貼ってある。よく見ると、その横の壁にもたたみが貼ってある。
ほほう。
「ペレステモンの主人と僕の共通点は、無駄に捨てるものを出さないことなんですよ。」
ほほう。

やはりただ者ではない人の友人もただ者ではない。聞くと、この店は1年半かかってすべて自分で作ったのだそうだ。
特に素晴らしい物とか、高級品が置いてあるわけではない。ただ、愛情こめて丁寧に作られたもので満たされている。古い家具もきれいに磨かれていて、CDの収納に使われていたり、飾り棚になっていたりする。
そしてとてもシンプルだ。単に捨てられないから全部とってある、というわけではない。余分な物は何もない。こんな空間を創れる人は、信頼できると思った。

こういう店はだれにも教えずに、本当に自分の大切な人とだけ行きたい。と思いつつ、書いてしまうんだなあ、私は。
ドイツパンが好きで、ゆっくりくつろぎたい人は行くべし。





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